安倍首相と岸田外相は腹を切るべきか?
「日ロ共同経済活動」と
「オバマ広島訪問」の真意とは。
藤井聡(内閣官房参与)×適菜収(作家)新春対談「2017年どうなる、どうする?」第1回《集中連載》
適菜 ロシアの法律の下で行う活動を日本国政府が認めれば、間接的にではあるけれど、ロシアの主権の支配下であることを政府が公式に認めたと誰もが解釈しますよ。日本人以外は。
藤井 ロシアがそれを狙ってきたのは事実です。そもそも、ロシアは、共同経済活動をやりましょうと甘い言葉を言いつづけてきた。それに今まで、日本人は乗らなかっただけなのです。
適菜 安倍の譲歩ぶりに逆にロシア側がびっくりしたようです。ロシア側の報道ですが、主権について日本からは何の言及もなかったと。
藤井 ただし、交渉の前日に、野上副官房長官が、我が国の立場は崩さないと言っているんですね。共同声明の中にも、両国の利益を損なうことはないと言っていますし。
適菜 でも、あれは正式な共同声明ではないですよね。プレス向けに出しただけで。
藤井 共同記者会見ですね。
適菜 共同声明は出せなかったんです。
藤井 とにかく、日本国政府が向こうに主権があるということを認めるような活動をやることは、断じて許されない。日本政府も、それを理解していることは、野上官房長官の言葉から明確です。
適菜 だけど今回は、その許されないことが起こる疑義が濃厚にあります。先ほどの右翼も、その許されないことを安倍がやったと怒っているわけですよね。
藤井 街宣車から聞こえてきた声の主は、まさにそれを怒ってる感じでしたね。
適菜 敗北だという認識ですね。
藤井 もちろん、「特別な制度をロシアに認めさせる」という「プラスの可能性」もある。けれど、あのプーチンがそれを認める可能性がどれだけあるかは、全くもって全然楽観できないのは明白です。一方で今回の展開の帰結として、(日本がロシアの主権を正式に認めるという)「取り返しのつかないマイナス」が生ずるリスクも孕んでいることも否定できない。
適菜 そうです。
藤井 ただ、こうした話は日露外交の常識中の常識で、あえて論ずるまでもない当然の話。なのに、ほとんどの人がわかってない。世論は「あのプーチンが安倍さんの地元にやってきた、なんかすげぇ」という雰囲気しかない。こんな世論のままじゃ北方領土は絶対帰ってこない、ってことで仕方なく、「あくまでも事実の解説」という趣旨で、そのあたりを解説する記事を一つ書いて公表したんですが……。
適菜 藤井さんの場合は立場上難しいですよね。藤井さんが学者として誠実に感じていることがあっても、政府が滅茶苦茶をやっているときに、思ってることを率直に書くのは難しい。今回はまさにそのケースですよ。